杉並警察署の警備課による張り込みから一年半、恥ずかしくもまたもや革命的警戒心の衰えが露見した。
解散闘争の失敗…というより、呑気に飲んでいただけなのだ。
今回参加したのは、10月21日に行われた在特会のデモへの対抗アクション。
約5年前と比べると隔世の感ではあるが、街頭での極端な排外主義がスプリングボードとなり、制度的レイシズムが温存されるどころか強化されるという漁夫の利的構造は今日の入管政策を見れば明らかである。
戦略もなく反射的に”日韓断交”を掲げる在特会の姿は、安倍の無策な対DPRK外交と表裏であり、実際に政権が直接関知できない事案のための別動隊なのだが、各地での動員は明らかに目減りしていて、今回は十数人と目視で確認できるほどだ。
対抗するいわゆる「カウンター」も専ら諸個人の結集で、そのありようも情勢の変化を正確に反映しているが、警察だけは相変らず多い。
法律や条例ができても、警察は排外主義者を取り締まらない。なぜか。それは、ポリ公自体が国家意思に貫かれたレイシストだからである。
社会的に包囲して拝外主義者を孤立させるという戦略からすれば、権力とどう「折り合い」をつけるかということになるのだろうが、ブルジョア民主主義を求める限りは排除の線引きが変わるだけだ。
このような情勢のもとに、今回の尾行事件は起きた。
わたしたちは行動後に適当な飲み屋に入り、ああでもないこうでもないと酒席を楽しんでいたのだが、2時間ぐらい飲んでもまだ明るく、二次会に行くことにした。
少なくとも、この二軒目には尾行の刑事が店内にまで入ってきていたのだった。
呑気に二次会を楽しんでいたわたしたちはここでも2時間ほど飲み、さすがにそろそろと店を出て帰路につこうとした、その時だった。
「今出てきたあいつ怪しくない?こっち見ながらウロチョロしているよ。右翼なんじゃないの?」
どれどれと見てみると、確かに怪しい。普通、人は目的地に向かって歩く。まったくあてのない散歩というのも、なかなか難しいものだ。
なぜ気付いたかと言えば、わたしたちが立ち話をしていたからなのだが、自販機で飲み物を買うふりをしたり、おもむろに地面にカバンを広げて何かを探しているふりをしたり、つぶれたふりして路肩にうずくまっていたりと極めて挙動が不自然なのである。
うずくまった尾行者を携帯のカメラで撮りまくる。反応があるまで撮りまくる。すると、止まないシャッター音に反応して、赤信号を渡って逃げる。
わたしは奴を道交法の現行犯で私人逮捕することに決めた!
尾行者は少し北に歩き、また横断歩道を渡り、ついには走り始めたが、走り込みで鍛えた私の足にはかなわなかった。
その後の顛末は『救援』17年4月号拙文とほぼ同様で、尾行者は通りすがりだと言い張り、その後パトカーがきて、こちらは先手必勝で「つきまとわれている→つきまとっているのは警察官→違法な警察活動をしている」と主張する、という流れである。その途中で「通りすがりの酔っぱらいだ」といって絡んできた輩がいたが、こいつはペアで尾行してきた刑事なのではないかと思っている。
「通りすがりの酔っぱらい」は臨場した警察官=杉並署員にあれこれ話しているふうであったが、そのうちいなくなった。
わたしは、「警察官である以上は、氏名・階級・証票番号、そして警察活動が適法である理由を明らかにしなければなならない、尾行者が自主的に名乗らないなら照会せよ」と要求する。
尾行者は自らの氏名を名乗ったようだが、杉並署員は無線の照会では犯歴しかわらからないので警察官かどうかはわからないという。
「私の勘違いなのであれば謝らなくてはならないので、警察官による尾行でないことをはっきりとさせなくてはならないから、杉並署でしかるべき手続きで確認せよ」と要求するも、確認中だから待ってくれと、延々と待たされる。
日もまたいだ。通りすがりなのであれば、明日も仕事があったりもするだろう。しかし帰ってはないという。「本部に確認している」とポロリと漏らす杉並署員。これはビンゴだなと思う。
「この数時間、なんでこんなに時間がかかっているのか、どういう進捗なのか。差し支えない範囲でもかまわないので、説明してくれ。それが筋なんじゃないのか」と問うも、パトカーで来た警察官も、あとから駆け付けた宿直の刑事課もひたすらだんまりだ。「本部」からの連絡がなく放置されているのか、到底説明できる内容ではないのか、のいずれかであろう。
最終的には、杉並署に向かい、ロビーで待つことにした。
4時頃に杉並署に到着したのだが、その30分ぐらいして、一人の私服刑事が現れた。
那須周、警部、証票番号981350。
部と課は「捜査に支障がある」というお決まりの答弁で答えなかったが、警視庁本庁から来たことは認めた。ほぼ100%公安デカだろう。
那須は、尾行者が警察官であり部下であること、尾行していたことは間違いないと認めた。
しかし、尾行については、「詳細には確認していないが、適法に活動するよう指示しているので、適法である」という同語反復。なんたる詭弁!
そもそも、捜査の対象なのか?具体的に犯罪との関わりがないところで、無制限に尾行が許されるわけがない。適法であるためには厳しい要件が課されているはずだ。
「尾行が適法ならば、私が尾行者を咎めたことが公務執行妨害の現行犯になるんじゃないのか?」と問うと、詳細に確認してみないと何とも言えない、と。
「今回の件は、上司の私が対応します。訴訟なら広報課に連絡をしてほしい、逃げも隠れもしない」という。
逃げも隠れもしないなら、尾行者を連れてきて、身元を明らかにして、一連の事実関係を説明させて、謝罪させるべきなんじゃないのか。
ちゃんちゃらおかしい。ほぼ朝まで待たされてそれだけかよ…
「あなたの所属する部と課と、部下の氏名・階級・証票番号・所属する部と課を明らかにすれば、今日のところは帰る」と伝えると、確認するので待ってくれと那須。
結局、1時間待たされてゼロ回答であった。長い時間待たせてしまったことは申し訳ないと思わないのかと聞くと、しぶしぶ頷く。お前は地蔵かよ!
この日は、グッタリしながら家路についた。 よし、今日は夕方から迎え酒だ!
階級闘争と革命によって差別は解消するという序列的理解が公式的な共産主義者の見解だが、抑圧は常に複合的でものであり切り分けることができない。
資本主義の発展には生産手段と労働力商品の分離のみならず、略奪による本源的蓄積があってはじめて可能となる。
とすれば、被抑圧民族にとって、天皇制と闘い、レイシストと闘い、入管体制と闘うことが、まさに階級闘争となるのである。
その一端として、無法な尾行攻撃を許さず、排外主義者と警察の結託を粉砕する。追って反撃戦の狼煙があがるだろう、刮目せよ!