カテゴリー: 抗議声明
●緊急声明● 「ただこの暴力を見つめてほしい」
新橋のキャバクラ店に勤務する女性が殺されました。
報道によると、今月4日、営業中の店内で「オーナー」である男性が、従業員である女性の「髪をつかんで引きずり、馬乗りになって顔を何度も執拗に殴る」などしたのです。
女性は急性硬膜下血腫などの大けがを負った末、搬送先の病院で今月10日に亡くなりました。
私たちは彼女の死に強い怒りと悲しみを感じます。そして彼女の恐怖と絶望に戦慄を禁じることができません。
何より「彼女」は、「私たち」だからです。
この事件で実際に振るわれた暴力は、キャバクラ店での接客に従事している私たちに日常的にほのめかされ、見せつけられてきたものです。
この事件は決して個人間に生じた例外的事件ではありません。
私たちフリーター全般労働組合/キャバクラユニオンは、当事者と共に闘う中で、経営者からの非道な支配と暴力を何度も目にしてきました。
暴力は日常的にほのめかされ、見せつけられ、行使されています。この事件は特異で例外的なものではなく、私たちが常に向き合わされている現実です。
そして、またしても始まった個人的関係と背景の詮索に、強く憤りを感じます。
幾多の人々が機に乗じて「水商売だから悪い」「仕方がない」という結論にたどり着こうと情熱を注いでる。
殺害の尻馬に乗って加害を上塗りする人たちには、どんな関係であろうと、どのような背景があろうと、殺害が正当化されていいわけがないと伝えたい。
ただこの暴力を見つめてほしい。
女性だから殴られ、水商売に従事しているから殺される。
同種の事件が繰り返されているのは、この社会が水商売で働く女性は殴ってもいいとみなしているからです。暴力を終わりにするには、この差別的な社会の視線を徹底して問題にする必要があります。
私たちは、私たちに注がれる差別的な視線に抗議します。そしてこの事件と、事件を産み出し続ける社会を強く強く追及します。
2017年7月29日
フリーター全般労働組合/キャバクラユニオン
共謀罪法案の強行採決を断固として弾劾する声明
参議院本会議では、本日7時46分ごろ、共謀罪法案の採決が行われ、賛成165、反対70で、共謀罪法を可決・成立させた。
この法案に対しては、刑事立法の基本原則である罪刑法定主義を無視し、「テロリズム集団」「組織的犯罪集団」「準備行為」等、処罰範囲を確定するために必要な概念が明確にされず、277(法務省は、数を少なく見せるために1項犯罪と2項犯罪を同一犯罪と計算している。それらをすべて別個に計算すると、その数は316に及んでいる)にも及ぶ犯罪を処罰対象犯罪としているが、それについてもその根拠についての十分な説明がなされないままである。
法案の必要性については、「テロ対策」だと明言しているが、本当にテロ対策なのであろうか。
277犯罪の内訳は、テロ関連犯罪110、薬物関連犯罪29、人身搾取関連犯罪28、資金源犯罪101、司法妨害犯罪9である。110に及ぶテロ関連犯罪として列挙されているものは、テロが行われた際に発生するであろう結果を上げたものにすぎず、それらの計画を事前に察知し、取締りを強化してもテロ行為を防げるものではない。
そもそも、特定秘密保護法12条に規定する「テロ活動」は、①政治上の主義主張に基づくこと、②主義・主張を強要し、又は社会に不安を与える目的の存在、③人を殺傷し、重要な施設その他の物を破壊するための活動という三要件が必要である。
ここで掲げられている110のテロ関連犯罪の計画罪は、このテロの三要件とは無関係なものであり、この法案がテロ対策ではないことは明白である。
また、TOC条約は、国をまたいで存在する組織犯罪を防止するために締結された条約であり、テロ対策のためのものではない。しかし、安倍内閣は、この条約の批准のためと言いながら、市民をだまし、「この法律がなければテロは起きるのだ」と主張し、テロ対策には必要だという論法で押し通してきた。
この共謀罪法案は、277にも及ぶ犯罪の計画を処罰するものであり、計画していることを監視し、従来の刑事立法では絶対に処罰されることのない「心の中」を処罰するものである。
それを法務省は、「処罰の間隙」ととらえ、予備以前の段階での早期処罰を狙っているのである。それは、その段階での警察捜査が可能とするものであり、警察の「心の中」の捜査を認めるものである。
それは、警察による「心の監視」そのものであろう。
安倍内閣が推進する「戦争国家への道」に異議を唱える者を監視し、国論を一つにまとめ上げようとするものであることは明白である。
刑法は、民法とともに、国家の基本法である。国家の基本法を人々の理解を得る努力もせず、多数の数に頼り、強行採決で処理したことは、民主主義の否定であり、日本という国が安倍専制国家へと変容したことを示すものである。
私たちは、このような安倍内閣を許さず、安倍内閣の退陣を求め、闘いを継続するであろう。
2017年6月15日
共謀罪の創設に反対する百人委員会
「共謀罪」法案強行採決弾劾声明
安倍晋三自公政府は、五月一九日衆院法務委員会において、
「11.20 天皇制いらないデモ(吉祥寺)」への右翼・警察一体のデモつぶし ―天皇制暴力―に抗議する声明にご賛同ください!
・公表の可否もお知らせください。
11.20 天皇制いらないデモ実行委員会( http://tennoout.hatenablog.
= = = 以下をご明記ください= = = =
「11.20 天皇制いらないデモ(吉祥寺)」への右翼・警察一体のデモつぶし
●お名前(個人または団体)
●肩書(あれば)
●公開可否 可 または 否
→ 送り先メール tennoout@gmail.com
「11.20 天皇制いらないデモ(吉祥寺)」への右翼・警察一体のデモつぶし
2016年11月20日、私たちは、吉祥寺駅周辺において「
同年8月8日に発表された天皇・昭仁による「おことば」は、
当日、井の頭公園へ集合し12時45分から開始した集会は、
公園を出た途端、デモ隊は右翼の攻撃にさらされました。
右翼の襲撃は参加者にも及びました。殴る、蹴る、
この様な、暴行、傷害、窃盗、器物損壊などの右翼の行為に対し、
私たちは、右翼による暴力に加え、警察権力による「暴力の放置」
また、警察から情報を伝えられた周辺自治体の市議会議員が、
一方で、残念な事に、
天皇制はこの国を覆う最悪のイデオロギー装置の一つであり、
2017年2月2日
※以下は松平耕一が、雑誌「情況」連載用に準備した記事です。「情況」編集部に許可を取り、ここに掲載させていただきます。 【文化時評】「3・11被曝被害者は語ることができるか」松平耕一
ショックドクトリンによる共謀罪国会再上程阻止!国家緊急権反対! 盗聴拡大・戦後刑事司法解体法の廃案を勝ちとろう! ―戦争・治安法ラッシュを阻止する闘う流れを共同して創りだそう―
戦争国家実働化を阻止しよう!
今春は戦争・治安法改憲攻防の山場になる。戦争法・辺野古・反原発などを先頭に実働化阻止攻防が続く一方で、国内安全保障体制確立を目指す治安立法攻撃が相次ぐからだ。11・15パリ同時襲撃事件に対し、オランド仏首相は自らの空爆を棚にあげ・これは戦争だ・と叫び、気候温暖化反対デモ参加者200余名を逮捕するなど、いまも全土に戒厳態勢を敷いている。 5月伊勢志摩サミットを睨む安倍政権は、12・4「テロ対策の強化・加速化」方針を決定し、警察庁SAT(特殊急襲部隊)が自動小銃を携行する決定を下した。 昨年の戦争法攻防を反省することもなく暴走を続ける安倍政権は、国家緊急権を軸にした改憲に向け、その実質的態勢強化に向かっているといえる。惨事を自ら仕掛け便乗するショックドクトリン以外のなにものでもない。 私たちは、9・11事件を奇貨とした米・ブッシュ政権が、大量破壊兵器所有の大嘘で世界中を騙してアフガン・イラク戦争を仕掛け、IS台頭など中東に戦争と虐殺、大量難民を引き起こした直近の歴史を忘れるべきではない。 加えて、オランド政権が延長した非常事態法の内容に強く注目し警戒する必要がある。2010年頃から、米・英・仏・独・露・中そして日本など世界的な反・テロ・法ラッシュが続き、新たな段階に突入しているからだ。アルジェリア侵略戦争を機に制定された非常事態法は、直近では2005年パリ近郊での移民労働者叛乱に仕掛けられたが、今回は同法を改悪して適用され、更に憲法改悪まで目指されている。 劇場・集会場閉鎖、集会禁止、 危険な者の居所指定と警察・憲兵隊への出頭命令、 昼夜の別のない家宅捜査、 マスコミ等の規制、 居所指定されたメンバーが属する団体の解散命令などが、その内容である。新自由主義の危機深刻化の中で、従来型の統治能力をほぼ失ってきている帝国主義者らにとって、国家緊急権はオールマイティ・カードとしてある。 伊勢志摩サミットを控えた日本警察も『警察学論集』本年1月号で・テロ・対策特集を組み、官民共同で、治安弾圧・管理態勢を強化している。現場での弾圧エスカレート─秘密法に次ぐ盗聴法・司法取引そして共謀罪─国家緊急権による改憲は、文字通りワンセットである。民衆運動の未来を賭けて、何としても打ち砕かなければならない。 共謀罪国会再上程阻止!惨事便乗の安倍政権は恥を知れ! 共謀罪を再上程しようとする自民党の動きや『産経』の扇動は、ショックドクトリンの最たるものである。しかし、共謀罪国会再上程の策動は一昨年も前から菅官房長官らが国連組織犯罪条約批准に必要だと公言して、虎視眈々と狙ってきたものである。マフィア対策を主眼とする同条約は、パリ同時襲撃事件やテロ対策とは直接の関係はない。デマを流し、使えるものは何でも使おうとする政治姿勢は強く糾弾しなければならない。 『産経』が悪扇動する・国内テロ・対策としての・組織犯罪準備罪・の骨格は、第1次安倍政権が画策した・テロ等謀議罪・と瓜二つである。しかも、当時の売り物であった(今では700近くに上ると推定される)対象犯罪削減に全く触れないなど、安倍政権の強硬姿勢が露わになっている。 民法改正など昨年通常国会来の積み残し法案や刑訴法等改悪案参院審議が残り、常識的には今通常国会への共謀罪上程は無理だとされるが、2月に東京で国際テロ・国際組織犯罪専門家会合が開かれるとの情報もあり、予断を許さない。早急に反対の声をあげ、反撃に起ちあがろう。 刑訴法等改悪案の参院廃案を勝ち取ろう! 刑訴法等改悪案をめぐる攻防は続いている。盗聴拡大・裏切りや密告の制度化・冤罪拡大をねらう刑訴法等改悪案は、衆院通過を許したものの、反対運動の力で、政府・法務省・日弁連執行部などが狙っていた昨年通常国会成立を阻止した。・全会一致・の短期・拙速制定に賭けた法務省らの目論見は失敗した。安倍政権の秘密法→盗聴法→共謀罪制定による現代版治安維持法態勢構築への野望に対して大きな打撃を与えている。 昨年通常国会閉会以降も、日弁連人権擁護大会情宣、院内集会、福岡市民デモ、全国52単位弁護士会への反対声明要請、2・5日弁連会長選情宣、国会行動、単位弁護士会主催の共謀罪集会など、いまも反対の声は広がっている。力をあわせ、悪法を廃案に追い込もう。 通常国会の予算案審議終了後の4月から刑訴法等改悪案審議が始まるとされるが、廃案に追い込むには、それを待つわけにはいかない。院内・外を貫く闘い、参院選(廃案)まで実質一カ月半の攻防をいかに闘うかが問われている。『産経』1月21日号が同法案について・暗雲漂う─国会日程余裕なく…関係者落胆・と報じたが、一方で強行採決も噂されている。法務省らに悪夢を見させてやろう。気を引き締め、大衆運動の力で参院採決阻止─廃案へ! 反対の声を大きく広げよう。 戦前日本では、関東軍による張作霖爆殺事件を・満州某重大事件・とのみ報じ(真相は東京裁判まで隠され)、その3年後の関東軍将校らの謀略による・満州事変・勃発時には、NHKが史上初めて臨時ニュースを流して排外熱を煽りたてるまでに至っていた。爆殺事件直前の28年大弾圧(全国で約1600人一斉逮捕)と治安維持法改悪で反天皇・反戦勢力がほぼ壊滅させられた歴史を再び歩むわけにはいかない。 国家緊急権反対・改憲阻止の共同反撃へ! 新たな危機の中で進む世界的な・対テロ戦争・と安倍政権の暴走に抗して、戦争・治安エスカレート─明文改憲策動と対決する奔流を創りだすことが、のっぴきならない形で問われている。私たちは、今春の攻防を・共謀罪も盗聴法も秘密法もいらない・・国家緊急権反対・改憲阻止・・対テロ戦争反対・を掲げて全力で闘い抜くとともに、研究者・弁護士・各領域の活動家などが集まって交流・討論する「戦争と治安管理に反対するシンポジウム」を開き、濁流に抗して闘う態勢を創りだす。戦線を超えて共闘し、共に反撃しよう。時代の転換点を共に闘い抜こう。 戦争と治安管理に反対するシンポジウムィ「対テロ戦争とは何か? 今こそ断ち切ろう!戦争と弾圧・排除の道」3月13日(日)13時開場・13時30分~19時南部労政会館、 分科会(13時半~一六時) ・戦争・治安・改憲安倍暴走の行方 提起者:石川裕一郎さん(憲法学者)+現場から ・共謀罪・盗聴法・秘密法戦争・治安は一体 提起者:春日勉さん(刑訴法法学者)+山口正紀さん(ジャーナリスト) ・国家主義差別・排外を撃つ 提起者:安田浩一さん(ジャーナリスト、予定)+現場から 全体集会 16時半~19時 パネル・ディスカッション 提起者:清水雅彦さん(憲法学者) コーディネイター 足立昌勝さん(刑法学者) 連帯挨拶・リレートーク等 ・資料代 前売券500円・当日600円 *3月22日(火)「冤罪をふやし、盗聴・密告をはびこらせる刑訴法等改悪法案を廃案に!市民集会」(盗聴・密告・冤罪NO!実行委員会主催、18時~南部労政会館、500円)にご参加ください。共同行動の予定はhttp://hanchian.3zoku.comに流します。 (石橋 新一/破防法・組対法に反対する共同行動)
救援連絡センター財政強化のお願い
常日頃からの救援連絡センターの活動に対するご理解と協力にあら
救援連絡センターが設立された1969年3月から、47年目の新
救援連絡センターは、1970年代、安保・沖縄・学園諸闘争への
昨年秋、安倍自公内閣は、10月内閣改造を行ないながら、臨時国
かつてに比べれば、逮捕者の数こそ圧倒的に少なくなったとはいえ
昨年一年間、救援連絡センターの財政は、極めて逼迫し、事務局員
第一 2016年、今年もあらためて、各地域、職場、単位からの一般カ
第二 協力会員、『救援』定期購読者の拡大に協力をお願いします。
協力会費 (一口・毎月1000円×12=年間12000円、購読料も含み
購読料 (一部300円・年間12号分で第三種開封郵送料こみで4500
第三 「強化基金」への協力をお願いします。
強化基金(毎月3000円×30口=9万円 目標)
事務局員4人目の「活動費」の確保と不足分の補充を目的にしてい
2016年 1月 救援連絡センター運営委員会
代表 足立 昌勝
代表弁護士 葉山 岳夫
事務局長 山中 幸男
運営委員 長谷川英憲
同 三角 忠
「パリ地域6カ所同時襲撃事件」―今、問われるべきこととは何か? 鵜飼 哲(一橋大学教員)
11月23日、フランスの首都パリとその郊外で計六カ所が同時に襲撃され、死者は130名、負傷者は350名を超えた。21世紀に入ってからヨーロッパで起きた同種の出来事としては、2004年3月11日、スペインの首都マドリード駅頭の爆発で191名が亡くなって以来の規模の大量殺人となった。同じ時期にはイギリスの首都ロンドンでも、2005 年7月7日、ほぼ同時に四カ所で爆発が起き、56名の死者が出ている。ここで想起しなければならないことは、この時期スペインとイギリスが、アメリカとともに、イラク戦争に参加していたことである。
今回なぜフランスが狙われたのかという問いに対して、今の段階で十分な回答を示すことは難しい。この同時襲撃の実行主体として声明を発した「イスラーム国」の登場は、現在のイラク、シリア、ひいては中東全域の地政学的条件の錯綜のため、その経緯を正確に把握することは容易ではない。また今回の声明に、実行の計画主体でなければ知り得ない情報は何も含まれていない。1月のシャルリ・エブド社襲撃事件ですでに激しく動揺しているフランス社会に、さらなる打撃を加えることで、ある方向にこの国を動かすこと、それがどの国、どのような勢力の利益になるのかはかならずしも自明ではない。ひとつだけ明らかなことは、今回の事件が、現在のフランスが、2004、5年のスペイン、イギリスと同じく、中東・アフリカのいくつもの地域で軍事作戦を展開していることと、無関係ではありえないということである。
筆者は今年の3月末までパリ10区に住んでいた。今回襲撃を受けたカフェ「カリヨン」、レストラン「プティ・カンボッジ」は、当時の住まいから徒歩10分の距離にある。共和国広場から東に向かうサン=マルタン運河沿いのこの地区は、夏は河岸が人で埋まる人気のスポットであり、「ボボ」と呼ばれる新興若年富裕層や観光客で賑わうエリアの北限であるとともに、多様な民族的出自の人々の混住が市内でもっとも進んだ諸地区にも隣接している。トルコ人、クルド人が多く住むサン=ドニ地区、アフリカ人のコミュニティが定着したシャトー・ドー地区、ロンドンとの交通の便のためにインド人、スリランカ人中心の町となった北駅および東駅の周辺、アラブ系、ユダヤ系の人々が長く共存し、ヴェトナム人、中国人の人口も増加してきたベルヴィル地区からも遠くない。もっとも多くの人が殺されたコンサート会場バタクランは、ポピュラー音楽が戒律にもとるものとして「断罪」されたのだろう。フランスとドイツのサッカー親善試合が行われていたサン=ドニ市のスタード・ド・フランスは、観戦中の共和国大統領が象徴的標的だったと思われる。それに対し10区、11区では、部分的に実現されつつある多民族共生社会が攻撃されたのではないだろうか。
1月のシャルリ・エブド襲撃事件には前史があった。同紙によるイスラームの預言者の風刺画の掲載は、フランスのムスリムを代表する機関であるパリ大モスクからの告訴を受け、裁判の結果、2007年3月、風刺新聞社側が無罪となる司法判断が下されていた。編集委員等の殺害の実行者たちが、モスク側の敗訴というこの結果を受けて、「預言者の復讐」を誓ったことは想像に難くない。その意味でこの襲撃は、政治的である以前に、宗教的、社会的、文化的な事件だったと言えるだろう。それに対し今回のパリ地域六カ所同時襲撃事件は、その規模と無差別性において、ある企図のもとに周到に計画、遂行された作戦行動であり、組織的、政治的性格が強く感じられる。
フランスは戦争中の国である。1月の事件以前から鉄道の主要駅では、迷彩服の兵士たちが二人一組で、つねに機関銃を手に巡視活動を行っていた。兵士たちの存在は通行人に、自分たちが守られているという安心感以上に、いつ何が起きてもおかしくないという不安を感じさせていた。欧州議会選で極右政党・国民戦線が躍進した2014年のフランスには、災厄の予感が、日常の生活感覚のなかに、すでに耐え難いほど広がっていたのである。
2011年3月、フランスは国連決議1973を根拠に、イタリア、イギリス、アメリカとともにリビアに介入し、指導者カダフィの殺害に至る政権転覆を強行した。注意すべきは、この軍事作戦が、米、英以上に仏、伊によって主導されたことである。2012年5月、社会党の候補フランソワ・オランドが大統領に当選、内政、外交ともに、サルコジ時代の悪政が、多少なりとも是正されることが期待された。しかしこの期待は残酷に裏切られ、就任後1年の間にオランドの人気が回復したのは、2013年1月、マリの内戦に介入したときだけだった。この時オランドは「テロリストを破壊する」という戦争目的を広言し、フランスはこうして、アフガニスタンとイラクの失敗以降、米英がもはや使わなくなった「対テロリズム戦争」のレトリックに、いわば一周遅れで訴えるようになったのである。
無為に終止したエロー内閣の後を継いだヴァルス内閣は、就任早々ネオリベラリズム路線を鮮明にし、ブルターニュのノートル・ダム・デ・ランド空港建設反対運動など、エコロジー系の地域闘争にとりわけ激しい敵意を向けた。今回の事件後の緊急令によって、空港反対闘争の中心的な活動家3名が居住地指定処分を受け、COP21開催に対する抗議行動に参加するためパリに移動する自由を奪われた。現在のフランスで「テロリスト」という言葉が使われるとき、イスラーム主義的な「聖戦」派だけが狙われているのではない。このタイプの予防弾圧は、今後いっそう深刻になることが予測される。
シリア以前にフランスは、リビア、マリ、中央アフリカと、アフリカでの軍事活動にのめり込んでいた。そして昨年9月、フランス人登山家がアルジェリアのオレス山中で「イスラーム国」を名乗る集団に殺害された後、イラクにおける対「イスラーム国」空爆作戦への参加を決定したのである。しかし、シリアの旧宗主国フランスは、この間一貫してアサド政権の退陣を要求してきたため、シリアの「イスラーム国」支配地域への空爆には及び腰だった。それが今年九月、二万人のシリア人難民受け入れ方針の公表と同時に、難民の「発生源」を叩くという口実で、シリア空爆に踏み切ったのである。この決定について、政府内に意見の不一致があることを見透かされ、今回の事件を招いた可能性は否定できない。
2003年のイラク戦争開戦前夜、フランスが国連を舞台に精力的に展開した戦争反対の意志表示を思い出すなら、10年あまり後にこの国が、なぜここまで来てしまったのか、いくつもの疑問が浮かび上がる。国内では公教育におけるヴェール着用禁止法の制定(2004年)、郊外における若者の叛乱に対する弾圧(2005年)とムスリム系市民への抑圧政策が強化され、中東政策ではサルコジ政権下で親イスラエル路線への転換がなされ(2007年)、2009年、フランスは43年ぶりに北大西洋条約機構(NATO)に復帰する。ただでさえ日常的な差別にさらされ、平均の3倍を超える失業に苦悩するアラブ、アフリカ系の移民やその2世、3世が、いっそう疎外感を深めざるをえない方向に、この国ははっきり舵を切ったのである。2010年代の軍事介入路線は、以上のような内外の一連の政策転換の延長上に出てきたものである。今回の大規模殺戮にどんな政治的目的があったにせよ、フランスの国家および社会の急激な変化がはらむ社会的かつ地政学的な矛盾が、意図的に、鋭く衝かれたことは間違いないだろう。
日本の民衆運動にとって重要な点は、フランスのNATO復帰が、安倍内閣の日本とフランスの、急速な接近の前提となっていることである。従来国連の常任理事国は日本に対し、米英が支持、中ロが反対という構図のなかで、フランスはキャスティングボートを握っていた。フランスのNATO復帰によってこのバランスは崩れ、核兵器保有国にして原発大国のフランスと日本の外交関係は福島原発事故を契機に急速に変質し、いまや国際政治上の重要なパートナーシップを形成しつつある。
日本を訪問したヴァルスは10月3日、安倍に対し、来たるべき国連改革において日本の常任理事国入りを支持すると明言した。旧植民地帝国同士のこの友好関係の深化には、マリ介入の際フランスから自衛隊の派遣要請があったことからも明らかなように、すでに軍事的次元が含まれている。現在のグローバルな帝国主義的軍事再編のなかでは、集団的自衛権の問題を日米関係に限定して捉えるだけでは決定的に不十分である。米国の戦争政策に追随するばかりでなく、独自の帝国主義的利害にもとづいて、国連政治上の実績を積み上げるために自衛隊を戦地に派遣することが、安倍内閣の政治日程には、すでに組み込まれていると考えるべきだろう。
3ヶ月に延長された緊急令に対し、フランスの民衆運動は、「難民歓迎デモ」(11月22日)、「COP21に対抗する人間の鎖」(11月29日)を敢行し、多くの逮捕者を出しながら、力強い抵抗を開始している。私たちもまた、米英仏のシリア空爆に反対し、日本の加担を許さない国際主義の闘いを、緊急に組織する作業に取りかからなければならない。