私たち「安倍戦争国家と天皇制を問う2・11反『紀元節』行
動」は、今年も渋谷で反天皇制・戦争国家体制に反対する集会とデモに
取り組んだ。
この日は、集会会場近辺で奉祝派のデモもあり、右翼街宣車も押しか
けるかとも予想されたが、デモの出発地点から離れたところで、在特会
系のグループが街宣し、また集会中に徒歩で数名の右翼が登場したほか
は、右翼の妨害は例年よりもひどいものではなかった。
一方、この日の警察・機動隊の不当な規制は、度を越えるものであっ
た。何ら正当な理由も必要性もない規制が、出発前から解散地点まで一
貫して加えられ続けた。それはまさに、規制のための規制、規制を自己
目的化した規制というべきものであった。
警察の指揮者だけでなく、多数の警察官が絶えず宣伝カーの窓ガラス
を執拗にたたき続け、「早く行け」「警告」と急がせた。それは運転妨
害になるほどだった。デモ隊と宣伝カーが離されないよう、車の横につ
いて歩いていた実行委のメンバーは、警官に囲まれ車から引き離され
た。その結果、宣伝カーとデモ隊との間にすき間ができると、こんどは
それを理由としてデモの参加者の体を押して、早く進めと繰り返す。こ
の不当なやりかたに抗議した監視弁護士さえ、私服警官に囲まれて歩道
に押し上げられてしまった。念のために言っておくが、デモ隊はことさ
らに遅れていたわけではなく、急がされる理由などなにもなかった。し
きりに急かすだけの警察官は、「デモの解散時間を知っているのか」と
いう抗議にたいして答えられず、さらには、間違ってデモの進行方向と
は逆に誘導しようとする始末であった。
デモ隊全体に対して、機動隊の並進規制や、後方や真横からの圧縮
(押し込め)が間断なくなされた。何人もの参加者が突き飛ばされた。
途中で具合が悪くなったり、倒れこんだ参加者も出た。これに抗議した
実行委のメンバーに対しては、「こいつらを歩かせるように指示しろ」
と言い、なおも抗議すると「逮捕するぞ、警告!何時何分……」などと
恫喝した。「許可条件を守れ、デモ隊は三列」と警官は繰り返していた
が、実は「許可条件」は四列なのである。さらに三列どころか、デモ隊
列は二列、一列にさえ押し込められていたのだ。また、「デモは交通の
迷惑になる(から規制されて当たり前)」と言い放つ警官もいた。デモ
は車道を歩くものであり、それが交通に一定の支障を来すのはあたりま
えのことである。そのことを前提にして、デモという表現の自由が尊重
すべきものとされるのだ。法を遵守しなければならない警察官が言って
よいことではない。
「今回のデモ参加者で、警官に押されたりさわられたりしなかった人
間はいなかったのではないか」という感想が聞かれたが、これは決して
大げさな話ではない。
とりわけ今回ひどかったのが、警察によるデモの参加者に対する暴言
や、侮蔑的な態度である。いつもであれば、デモ隊への妨害は同じで
あっても、口先だけは「詰めて下さい」「早く進んで下さい」と、表面
上「笑顔」さえつくる。しかし、今回は「前に詰めろ!」「お前ら早く
進め!」である。表面的な「ていねいさ」さえかなぐり捨て、その言葉
つきにふさわしい態度と顔つきは一貫していた。若い機動隊員の中に
は、薄ら笑いを浮かべつつ、高齢の参加者を「はい、がんばろう!」と
言いながら何度も押している奴もいた。実に許しがたいことだ。
こうしたことのすべてに、私たちは何度も抗議をしたが、責任者然と
した警官は「デモの許可を出してやったのは警察なんだから、お前らは
言うことを聞け」と公言した。デモは憲法に保障された思想・表現の自
由、基本的人権に属するものである。公安条例自体が不当なものだが、
東京都の場合デモは届け出制であって、基本的に受理しなければならな
いものなのである。たしかに「許可証」は警察署長の名前で出るが、実
際に「許可」するのは東京都公安委員会である。「警察がデモを許可し
ている」などというのは、二重三重に間違った寝言である。
私たちのデモは、高齢者や「障害者」も参加する、非暴力の市民のデ
モである。デモにたいして卑劣な暴力を繰り返す街宣右翼などを理由
に、警察は陰に陽に、デモへの介入を目論んできた。しかし、今回はそ
のような右翼は登場しなかった。そのようなかたちでのデモ規制をする
ことを通して、警察がデモを徹頭徹尾規制していく訓練がなされたので
はないかと疑う。今回、警備責任者は、実行委のデモ指揮者さえ無視し
て、デモ全体を警察の統制の下に進行させようとしたのだ。これは、い
つものデモとも、大きく異なるやり方である。おそらく下部の機動隊員
は、ただこのデモを急がせろ、規制しろという命令だけを受けて、それ
を「忠実」に履行するよう徹底されていたのではないか。多くの批判が
あるように、憲法を蹂躙して恥じない現在の安倍政権の強権的な姿勢
が、政権に批判的な言論・表現は規制されて当然という心性を、警察官
たちにも与え続けているのではないのか。
今回の警備がこのようなものであり、私たちがそのターゲットとされ
たことのほんとうの理由は、知るところではない。しかしはっきり言え
ることは、今回のデモ規制が、われわれの権利としてある表現行為を妨
害し、われわれが、われわれのペースとスタイルで街頭の人びとに対し
て訴えていく権利を侵害したということである。いま、全国各地で、さ
まざまにおきている街頭での人びとの抵抗や自己表現が、警察権力によ
る不当な介入や弾圧の対象となり、それにともなう人権侵害も目立って
いる。そこに見られるのは、法を恣意的に運用し、人びとの行動に分断
線を引く権力の無法である。
繰り返すが、デモの主体はデモの参加者であり、表現の権利と自由を
一片の行政権力が侵すことは許されない。警視庁、機動隊、私服・公
安、そして今回のデモに係わった所轄の警備警察官に対して強く抗議
し、二度とこのような不当な規制をおこなわないことを強く訴える。
2016年3月22日
安倍戦争国家と天皇制を問う2・11反「紀元節」行動