3・9ドキュメント!  張り込み・尾行を摘発! 報告者:張本効

出かける準備をしていると、玄関のドアをノックする音。
「おーい」
誰だろうと思い、返事をするとお隣さん。
「三日ぐらい前から、おたくの家の様子をうかがっているやつがいるよ。警察じゃないか?大丈夫かい?」
政治情勢と対抗運動が相補的に陳腐化していく様にうんざりして数年、ご隠居状態に入り“革命的警戒心”が薄れていたのか、全然気付かなかった(同居人は気付いていた)。まあ、政治日程的には3.11絡みかな…
準備を整え家から出ると、確かに電動自転車に乗った怪しい奴が大きな通り側に待機している
私は気にしないふりをして通りに出ようとすると、あちらさんは私の自宅の方向に向かい、自転車ですれ違う形になる。振り替えると、踵を返して私の後ろにピッタリ…
私は確信して、「おい!なに尾行してんだ!」と抗議する。
私服刑事はしらばっくれて、「何言ってんの?意味わかんないよ」と言い、逃げ出す。
あちらは電動自転車、こちらはロードバイク。私服刑事は逃げられない。
「何日も張り込みしているのはわかってるんだよ、警察手帳を見せろ」
「なんなんだよ、意味わかんないよ、単なる通行人だよ」
ほんとうに通行人なら、言いがかりに怒り心頭、飛びかかってきてもおかしくない。
「こっちには証人がいるんだ。ほんとうに通行人かどうかはっきりさせようじゃねえか。それに、お前が通行人っていいはるなら110番でもしてみりゃいいじゃねえか」
私服刑事は、電動自転車を降り携帯電話でどこかに電話。一言二言、口元を隠してしゃべっている。どうみても110番とは思えない。確信が深まる。
電動自転車を確認すると、防犯登録がない。バッテリーには「電動2号」とシールの表示。私服刑事は、電話を続けているので自宅前に電動自転車を移動する。
私服刑事は大きな通りから、電動自転車が停めてある自宅前に近づこうとしない。張り込み・尾行を一人でやるはずがないので、部隊で動いている私服が来るのかと思ったら、来たのはパトカーだった。
「トラブルがあったと聞いて」
「そうなんですよ、ストーカーに困っているんですよ。ほらあそこにいる。お巡りさんの同僚だとおもうんですが」
「お名前を聞かせていただけますか」
警察手帳を提示しない私服刑事の身元が明らかになってからの話ですね」
制服警官はしょうがなく私服の方へ近づく。
「同じ署の警察官でした」
「やっぱりそうじゃねえか、どこの部署なのよ」
「いま彼の上司が向かってますので、お待ちいただけますか?」
数分すると、立派な制服を着た警官が到着。
どちらさん?と尋ねると杉並署の警備課長だという。
やっぱりそうじゃねえか。
警察手帳の提示を求めると、写真撮影は嫌がるが、はっきりと「警部 伊藤潤」とある。
曰く、「振り込め詐欺や空き巣が増えているので、全署を挙げてパトロールしている。なかには私服もいる」
警備公安が詐欺や空き巣のパトロールなんかやるかよ、白々しい…

私服刑事が警備課長に電話し、警備課長がパトカーを急行させたらしいが、これが全署的防犯パトロールの指揮系統かね?

当の私服刑事の身元を確認する、伊藤警備課長は私服刑事を呼び警察手帳の提示をさせる。
「巡査部長 細川晃宏」とある。警備課に所属しているという。
真っ黒じゃねえか!
何の理由で尾行しているのか問うても、パトロールであるという建前を崩さない。
もう馬鹿らしいので「明日からは金輪際やらないように。続くなら法的措置をとる」と伝える。
警備課長は、パトロールは続くので、私服警官には求められれば手帳の提示をするよう徹底する、誤解されるようなことをして申し訳ない、という。
私も次の用事があったので、ここで切り上げた。
最後まで、私は自分の名前を明らかにすることはなかった。パトカーだけでなく、警備課長まで来たのに、しつこく聞かれることもなかった。職質だったら警察は引き下がらないぞ!
こりゃ、なかったことにしたくてしょうがないんだな…
なお、尾行の違法性については、渡辺修『警察官の尾行の要件――警察官の対象者に極端に接近して尾行した行為が違法とされた事例』(同志社法学29巻6号、1978年)が参考になる。
ちなみに、警備課長の伊藤潤は過去に本庁公安部総務課にいたそうだ。
ともあれ、杉並署警備課長が、(当たり前のことなのだが)警察手帳規則第五条の遵守を約束したので、すくなくとも杉並署の警備公安刑事の氏名官職は摘発し放題、全人民に活用していただきたい。