刑事訴訟法等の一部改正法案の衆議院本会議での可決・成立を強く弾劾する!

本日の衆議院本会議で刑事訴訟法等の一部改正法案は、与党並びに民進党の賛成の下で可決され、成立した。

本法案は、村木事件や志布志事件で明らかになった警察や検察不祥事に対する反省から、取調べの可視化を目的として始められたものであるが、可視化の対象となる事件については裁判員裁判対象事件に限定され、ほんの一部の事件の可視化を認めたに過ぎない。
その一方で、通信盗聴法の対象犯罪を従来の組織犯罪の四罪種から刑法犯罪である窃盗や詐欺にまで拡大し、質的転換を認めている。たとえどのような「組織性の要件」を加えたとしても、それは、「共謀」の一部としての「組織性」であり、そんな要件は何の意味も持たないことは明白である。さらに、通信事業者における通信盗聴から、特定電子計算機を用いた盗聴に変え、すべてを機械的処理で済まそうとしてしまった。この機械的処理についての正確性はだれにもチェックされることはなく、警察が正確だといえば正確ということになり、そんなものを信用することは無理である。
さらに、他人を警察や検察に売り渡す司法取引も導入された。これは、新たなえん罪を生み出すものに違いない。日本の取り調べは、供述中心主義であり、また、人質司法である。このような状況における司法取引は、まさに取調室という密室でのやり取りであり、売渡した者の供述が正しいという保証はどこにもない。このような司法取引の導入よりも、まず行わなければならないことは、供述中心主義からの解放であり、人質司法からの脱却である。
このように大きな問題を抱えた法案の審議において、参議院法務委員会は、たったの27時間しか審議せず、それは、衆議院法務委員会での審議時間の37パーセントである。良識の府である参議院での審議時間は、おおむね衆議院の6割から7割である。それにもかかわらず審議を打ち切り、採決に走ってしまった与党や民進党を弾劾する。
衆議院法務委員会は、昨年8月の採決以降に発生した新たな事象について、すなわち今市事件で提起された問題について十分な質疑もせず、ただ慣行としての再議決を行った。今市事件が提起した問題は、憲法38条3項にかかわる重大な問題である。それを無視して採決したことは、法律そのものに違憲条項を含むものであり、その成立を認めない。
このように大きな問題を抱えた本法案を十分な審議もせずに本会議にかけ、可決・成立させた暴挙は、歴史的に弾劾されるとともに、国民から強く批判される。
私たちは、本法案の違憲性を主張し、今後とも戦い続けることを表明し、本法案の成立を、声を大にして弾劾する。

2016年5月24日
救援連絡センター