戦争立法の強行採決糾弾!刑訴法等改悪案の通常国会制定を阻止したぞ!

戦争立法の強行成立糾弾!
9月19日、徹夜国会を機動隊の装甲車が取り囲み、反対の声を力で押し切って、戦争法が強行成立させられた。55年ぶりの日米安保―専守防衛政策の大転換であるにもかかわらず、ガイドライン改定―平和安全法制整備法・国際平和支援法などと仮装した欺瞞、〝法的安定性など関係ない〟とする反立憲主義・明文改憲への露骨極まりない姿勢は、徹底的に糾弾されるべき歴史的暴挙である。
しかし一方、安倍の暴走は、何十年ぶりの、しかも学生から老人まで全世代にわたる大衆的な反対の声と街頭行動の波を引き起こした。連日の闘いは政権中枢の狼狽をもたらし、政治が運動・力関係であることを大衆的に実感させた。元最高裁長官が違憲と断じるなど支配のイデオロギー的危機と亀裂が顕わになり、世論調査でも〝論議が尽くされていない〟が79%に上り、安倍政権の支持率は低下している。戦争国家化を阻止する闘いは続く。
安倍政権が狙う戦争国家化策動は、①集団安全保障・集団的自衛権・グレーゾーン強化などの戦争立法、②日本版NSC・防衛省設置法改悪・辺野古新基地建設・オスプレイ配備などの米軍・自衛隊再編や原発再稼働などの戦争遂行体制整備にとどまらず、③治安管理エスカレート、④思想的・社会的な動員・翼賛として、総合的に進められている。③は、日米新ガイドラインに初めて〝サイバー戦争〟が謳われたように、あるいは戦争法で〝国際治安支援〟が重視され対〝テロ〟戦争が謳われたように、戦争と治安が全世界的に融合していることにもっと警戒の目を向けるべきである。英2015反テロ法は地球上に異端者が棲息できない域に達している。日本でも伊勢志摩サミット戒厳、テロ指定・資産凍結法施行、東京五輪に向けた「世界一安全な日本」創造戦略が現在進行形である。通常国会でもマイナンバー法・個人情報保護法改悪や不正競争防止法改悪(産業機密保護法!)が強行され、国会周辺や辺野古で無法な弾圧が襲いかかった。④は、実戦に向かう自衛隊の充足率が70%にとどまる中で、高知中央高校が自衛隊コースを新設するなど自衛隊による若者のリクルートが活発になり、社会の全領域を軍事・治安管理のヴェールが覆いはじめている。安倍の暴走は安倍首相の極右的体質によるだけではない。
通常国会で刑事訴訟法等
  改悪案の成立を阻止!
マスコミが報じないため、通常国会での攻防を簡単に見てみる。3月13日閣議決定の刑訴法等改悪案は、5月26日衆院審議入り後、録音録画・司法取引・証拠開示・盗聴の徹底審議で法案の危険性が大きく暴露され、与党―民主・維新の修正協議は難航していた。8月初め時点で強行採決を乱発する以外に今国会成立の芽はなくなっていたが、それは戦争法審議の渦中では不可能であった。しかし8月4日夜に修正協議が突如合意され、事態は暗転する。5日衆院法務委で採決が強行され、マスコミが〝今国会成立へ〟と一斉に書きたてる局面に突入する。
しかし8月19日参院本会議で、民主党、維新はあたかも修正合意などなかったかのような〝賛成〟討論(修正が何の歯止めにもならないことは提案者自身が認めている)を行って慎重審議を求め、以降、法務委がまったく開かれない事態が続く。
こうした中で8月31日『時事通信』が、自民強硬派〝審議抜きの強行採決〟と公明〝継続審議〟の対立を報じ緊張が走るなかで、9月3日院内集会に民主党・共産党議員らが出席、民主党・小川議員が〝廃案へ〟と発言する。更に9月4日にマスコミが〝今国会成立見送り〟と報道する一方で、9月10日司法試験漏えい問題を審議する法務委で、与党が法案趣旨説明を強行し15日の審議を求めたが野党が拒否する、13日市民集会で維新・真山議員が法案反対を表明するなど、最終盤の攻防が展開された。以降、戦争法強行採決をめぐる攻防で法務委が開けず、26日継続審議となったのである。
流れを見れば明らかなように、通常国会攻防は、近来稀な逆転・再逆転の波乱に満ちた展開になっている。廃案こそ勝ち取れなったものの〝継続審議〟は運動の力で勝ち取ったものである。
到達点と課題
民主党政権の法制審諮問・日弁連を含む一括答申を受けた刑訴法等改悪阻止闘争は、極めて不利な力関係の中で出発せざるをえなかった。短期決戦の衆院攻防は、誰も想定しなかった長期戦となり、困難を超えて様々な運動上の成果を勝ち取られた。獲得した地平の意味を捉え返し、秋以降に向かう必要がある。
悪法阻止闘争は、従来の治安法反対闘争と異なって、①政府・法務省・与党による一括法案の拙速制定策動②日弁連執行部の政府への全面協力、民主党など与野党への働きかけ③多くのマスコミの沈黙④様々な市民団体の意思統一の困難と逡巡⑤運動圏の戦争法反対闘争への注力などの困難を抱えながら、執拗に闘い抜かれた。
①盗聴・密告・冤罪NO!実行委員会・新捜査手法反対連絡会議の奮闘
今春の闘いは、冤罪被害者とその支援の流れ+反治安法闘争を闘う流れ+弁護士会反対派の流れなどが〝危ういが画期的な共闘〟で、闘いを推し進めてきた。なかでも冤罪被害者が冤罪解消を名分とする法に反対する衝撃力は巨大であり、それは様々な政治的思惑を突き破った。冤罪被害者の闘いや法制審反対闘争を闘ってきた新捜査手法反対連絡会議などの闘いが、闘いを独自に進めながら、ジョイントして市民集会、闘う国会議員と合流した院内集会を重ねえた。カンパニアでなく、現場の闘いをそれぞれ進めながら共同して治安立法と闘い抜くことは、以降にとって大きな意味をもつ。
9月27日国会閉会以降も、臨時国会制定を阻止する闘いは続いている。9月15日に日弁連執行部が成立を見越して呼びかけた〝3%から100%へ〟可視化市民集会の欺瞞性を暴く弁護士会館前リレートーク、10月1~2日の日弁連人権擁護大会参加の市民・弁護士への訴え、冤罪被害者声明賛同の拡大などである。
②闘う弁護士・単位弁護士会、市民団体の反撃
日弁連執行部の屈服と締めつけを超えて、3・6京都弁護士会、3・13閣議決定時の一八単位弁護士会を皮切りに、52単位弁護士会のうち22単位弁護士会会長などが反対声明をあげた。異例の事態であり、この弁護士らの声を抑圧する3・18、5・22日弁連会長の早期成立希望声明は、文字通り〝恥知らず〟の一語に尽きる。また日本ペンクラブなどの盗聴法改悪反対声明など反対の声はようやく社会的に広がり始めている。
③翼賛国会への切り込み―闘う国会議員との連携
翼賛国会に切り込むことが容易でないことは、昨秋のテロリスト指定・資産凍結法攻防で明らかである。その意味では、法務省・日弁連らの早期成立工作をはねのけ、野党の良心的議員が反対の声を上げ続けているのは、以降の闘いにとって大きい。同時に、突然の修正合意は、翼賛国会内は伏魔殿であり、いつ何が起きるか分からないこと改めて知らせた。ロビー政治の時代は終わり、大衆運動の高揚、それに依拠した国会内・外の共闘にしか道はない。
手を緩めず、
廃案を勝ち取るぞ!
刑訴法等改悪案が、冤罪と盗聴を飛躍的に拡大し、戦後的刑事司法を破壊し、戦争国家に見合った検察・警察国家を創りだす画段階的な攻撃であることが顕わになってきている。しかも警察は、答申が〝今後の課題〟とした室内盗聴、あるいはDNA拡大、スパイ育成の制度化も進めている。〝新時代の刑事司法〟とは、非常事態型の臨戦国家に見合う刑事司法体系の構築であり、それは共謀罪・秘密法と一体になって〝現代版の治安維持法〟体制を創りだす。
法制審答申を受けて国会上程された刑訴法等改悪案が長期の通常国会で成立しないなどとは、誰も想定していなかったろう。しかし冤罪被害者や反治安法闘争を闘ってきた流れが合流した全力での闘いは、法務省・与党を追い詰めた。以降、推進派の巻き返し・激突が予測されるが、私たちは闘いとった時間を活かし、廃案に向け全力を挙げる。戦争と治安エスカレートを阻止するために、共に闘いましょう。
(石橋 新一/破防法・組対法に反対する共同行動)